サエボーグSaeborg
1981年富⼭県⽣まれ
東京都在住
プロフィール
- 2006年女子美術大学芸術学部絵画学科洋画専攻卒業
主な展覧会、公演
- 2024年「Tangente St. Pölten Festival for Contemporary Culture
『Super Farm』」(オーストリア) - 2023年「ミドルズブラ・アート・ウィーク」(イギリス)
- 2023年「世界演劇祭2023」(フランクフルト、オッフェンバッハ、ドイツ)
- 2022年「シアターコモンズ ’23」(東京都内エリア各所)
- 2022年「Ultra Unreal」(シドニー現代美術館)
- 2021年「『新しい成長』の提起 ポストコロナ社会を創造するアートプロジェクト」(東京藝術大学美術館)
- 2021年「Reborn-Art Festival 2021-22」(牡鹿半島(桃浦)、宮城)
- 2021年「Riga Performance Festival 『Starptelpa』」(オンライン、ラトビア)
- 2021年個展「LIVESTOCK」(PARCO MUSEUM TOKYO、東京)
- 2020年個展・公演「Cycle of L」(高知県立美術館)
- 2019年個展「SAEBORG: SLAUGHTERHOUSE 17」(Match Gallery、リュブリャナ、スロベニア)
- 2019年「あいちトリエンナーレ2019 情の時代」(愛知県芸術劇場)
- 2019年「DARK MOFO」(Avalon Theatre、ホバート、 オーストラリア)
- 2018年「第6回アテネビエンナーレ『ANTI』」(Banakeios Library、アテネ)
- 2018年「Fantastic: The Abyss」(Club80、メルボルン)
- 2018年「Tag: Proposals On Queer Play and the Ways Forward」
(Institute of Contemporary Art、ペンシルべニア大学、フィラデルフィア) - 2016年「六本木アートナイト2016 サエボーグ展『Pigpen』」(六本木ヒルズ A/D gallery、東京)
- 2015年「のけものアニマル ―きみといきる。」(はじまりの美術館、福島)
- 2015年「TURN/陸から海へ(ひとがはじめからもっている力)」(鞆の津ミュージアム、広島)
- 2015年個展「第17回敏子賞受賞者特別展示『HISSS』」(岡本太郎記念館、東京)
- 2015年個展「Slaughterhouse-13」(女子美ガレリアニケ、東京)
- 2014年「東京レインボープライド2014『Slaughterhouse-10』」(代々木、渋谷、原宿を走行)
受賞歴
- 2014年「第17回岡本太郎現代芸術賞」岡本敏子賞受賞
半分人間で、半分玩具の不完全なサイボーグとして、人工的であることによって、性別や年齢などを超越できると捉えるラテックス製のボディスーツを自作し、パフォーマンスとインスタレーションを国内外で展開する。カラフルで、デフォルメされた雌豚や牝牛などの家畜や害虫などが繰り広げるパフォーマンスは一見明るく楽し気だが、人間の残酷性や消費の問題のみならず、人間社会における介護やケアの問題にも接続し、強者/弱者、支える側/支えられる側という二項対立ではおさまらない、多様性の受容、共生の問題に発展させている。
TCAA2021-2023 選考委員長 コメント
選考委員会では、これまでアーティストのスタジオ訪問を選考の重要な判断材料の一つとして捉えてきた。今回、TCAAチームの優れた段取りのおかげで、実際に現地を訪問した選考委員も、オンライン参加の選考委員も、作家の創作活動について総合的に把握し、理解を深めることができた。私たち選考委員は各作家の話にじっくりと耳を傾けるとともに、作品とその思考について具体的に質問した。このようなやりとりや深い関わりは、受賞が誰になるのかという最終結果を決めるための手段だけではなく、選考委員にとって有意義な学びの場となっている。また、アーティストにとっても同様であることを願う。
選考はスタジオ訪問を踏まえて慎重に検討が行われる。日本と海外いずれの選考委員も、日本の作家の作品について率直に意見を交わすとともに、異なる視点から作品を理解しようと互いに努力を重ねた。選考の議論は、結論を出すことにとどまらず、今日の変化し続ける世界情勢における芸術活動の意義について深く考えるものでもあった。
受賞の理由
人間以外の生命体との健全な共存可能性を探索することは、地球温暖化やポストパンデミックの時代に活動するアーティストが意識せざるをえない問題のひとつであるが、作家は人間と家畜の関係を戯画化したパフォーマンスで、屠畜やケア、命の再生産や消費にまつわる生命と感情をめぐるポリティクスを活動の初期から問いかけてきた。生と死という普遍的で「重い」主題を、玩具を連想させる鮮やかな色のラテックスのコスチュームや舞台装置で表象することで、主題の「重さ」に相反する「明るさ」や「軽さ」といった感覚を鑑賞者に与えるが、同時に動物の生命を消費財として扱う人間の無邪気な残酷さをも想起させる。彫刻としての身体やパブリックパフォーマンスを含むその作品は、象徴性、挑発、痛烈な批評、伝染性のダイナミズムに満ちている。
またボディスーツによって拘束され、不自由になったパフォーマーの身体が必然的に「ケア」されるようになるという構造をポジティブなこととして捉える視点は、社会における関係性の認識に一石を投じるものであり、強さと弱さ、支える側と支えられる側、といった固定概念を問いなおす。作家が社会的包摂活動に長くコミットし、その活動があらゆる生命を平等に尊重しようとする制作態度や作品にも強く関連づけられていることは、私たちが真の多様化を目指すにあたり、多くの人々に共有されうるものと評価した。