風間サチコKAZAMA Sachiko
1972年 東京都生まれ
東京都在住
プロフィール
1996年 武蔵野美術学園版画研究科修了
近年の主な展覧会
- 2024年「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」(東京都現代美術館)
- 2024年「浮世:ジャポニスムから日本の現代アートまで」(レ・フランシスケーヌ、ドーヴィル、フランス)
- 2024年個展「風間サチコ展『Bad Morning! Tokyo』by 無人島プロダクション」(CADAN有楽町、東京)
- 2024年「第24回シドニー・ビエンナーレ Ten Thousand Suns」(Art Gallery of New South Wales、シドニー)
- 2023年「所蔵作品展 MOMATコレクション」(東京国立近代美術館、東京)
- 2023年個展「ニュー松島」(無人島プロダクション、東京)
- 2023年「森美術館開館20周年記念展 ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」(森美術館、東京)
- 2022年「Reborn-Art Festival 2021-22 利他と流動性」(石巻、宮城)
- 2021年「フェミニズムズ / FEMINISMS」(金沢21世紀美術館)
- 2021年個展「ディスリンピアン2021」(無人島プロダクション、東京)
- 2020年「日産アートアワード2020 ファイナリストによる新作展」(ニッサン パビリオン、神奈川)
- 2020年個展「セメントセメタリー」(無人島プロダクション、東京)
- 2019年「Co/Inspiration in Catastrophes」(台北当代芸術館)
- 2019年「メイド・イン・トーキョー:建築と暮らし1964/2020」(Japan Society、ニューヨーク)
- 2019年個展「風間サチコ展 コンクリート組曲」(黒部市美術館、富山)
- 2019年「現在地:未来の地図を描くために[1]」(金沢21世紀美術館)
- 2019年「東京計画2019」(gallery αM、東京)
- 2018年個展「予感の帝国」(NADiff a/p/a/r/t、東京)
- 2018年個展「ディスリンピア2680」(原爆の図丸木美術館、埼玉)
- 2018年「The Long Story」
(クイーンズランド州立近代美術館、ブリスベン、オーストラリア) - 2017年「ヨコハマトリエンナーレ 2017 島と星座とガラパゴス」
(横浜美術館) - 2016年個展「府中市美術館公開制作69 風間サチコ『たゆまぬぼくら』」
(府中市美術館、東京) - 2016年個展「電撃!!ラッダイト学園」(無人島プロダクション、東京)
- 2016年「光州ビエンナーレ The Eighth Climate (What does art do?)」
(光州ビエンナーレホール、韓国) - 2015年「18th DOMANI・明日展」(国立新美術館、東京)
- 2015年「2015 Asian Art Biennial: Artist Making Movement: 」
(国立台湾美術館、台中) - 2015年「passage 永遠の一日」(国際芸術センター青森)
受賞歴
- 2019年「第30回 タカシマヤ美術賞」(公益信託タカシマヤ文化基金)
- 2016年「第8回 創造する伝統賞」(公益財団法人 日本文化藝術財団)
- 2006年「第9回 岡本太郎記念現代芸術大賞(TARO賞)」 優秀賞
「現在」起きている現象の根源を「過去」に探り、「未来」に垂れこむ暗雲を予兆させる黒い木版画を中心に制作する。一つの画面に様々なモチーフが盛り込まれ構成された木版画は漫画風でナンセンス、黒一色のみの単色でありながら濃淡を駆使するなど多彩な表現を試み、彫刻刀によるシャープな描線によってきわどいテーマを巧みに表現する。風間は作品のなかで、現代社会や歴史の直視しがたい現実が、時には滑稽でコミカルに見えてしまう場面を捉えようとしている。そこには作家自身が社会の当事者であるよりも、むしろ観察者でありたいという意識が反映されている。作品はフィクションの世界だが、制作に際しては古書研究をするなど独自のリサーチを徹底し、現実や歴史の黒い闇を彫りおこすことで、真実から嘘を抉り出し、嘘から真実を描き出す。
選考委員長 マリア・リンド コメント
TCAA選考委員は、東京と京都にてTCAA候補者の全7名に会い、三日間に渡り作品について調査する有意義な時間を過ごした。濃密かつ刺激的な議論の末、受賞者として風間サチコと下道基行を選出した。両者ともプラクティス(実践)が堅固に構築されており、彼らの制作にとって、海外滞在に適した時期だと考えられる。
風間サチコの、伝統的な木版技法を再解釈し、復活させた独自の手法は際立っていた。多数の版を接合して巨大なイメージを作り上げ、都市風景のうちにディストピア的なシナリオを描き出すことで、歴史画のジャンルをも喚起させている。この極めて手のかかるプロセスを通じ、家父長制社会に生きる女性としての日常における心地の悪さと結びつけながら、綿密な歴史リサーチに基づき、日本の歴史における困難な時期の数々を扱っている。近年のリサーチでは、第二次世界大戦中のドイツと日本に焦点が当てられている。
受賞の理由
版画という伝統的な手法へのこだわりと同時に、思考においても個人の継続的な批評性をもとに制作を続けている。作品に独自性があり、綿密に行われる制作のためのリサーチやその過程によって、プラクティス(実践)が組み立てられ、自身に内在する社会への怒りや妄想が、制作を通じて作品として昇華され、社会に接続することを可能にしている。これまでのリサーチをさらに実践的に深めようとする作家の海外での活動に対する展望に対し、本アワードがその試みを支援することができるだろう。