志賀理江子SHIGA Lieko
1980年愛知県生まれ
宮城県在住
プロフィール
- 2004年ロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン卒業
主な展覧会
- 2024年「Poetic Record: Photography in a Transformed World」
(Hurley Gallery、プリンストン大学、アメリカ) - 2024年「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」(東京都現代美術館)
- 2024年「アルル国際写真フェスティバル2024 『REFLECTION – 11/03/11』」
(エスパス・ヴァン・ゴッホ、フランス) - 2024年「アルル国際写真フェスティバル2024 『I’m So Happy You Are Here』」(Palais de l’Archevêché、フランス)
- 2024年「カンヴァスの同伴者たち 高橋龍太郎コレクション」(山形美術館)
- 2024年「第8回横浜トリエンナーレ『野草:いま、ここで⽣きてる』」(横浜美術館)
- 2024年「Leif Holmstrand – The Life of Termites: The End」
(Malmö Konsthall、スウェーデン) - 2023年「Singing in Union Part 8: BETWEEN WAVES」
(インダストリー・シティ、ニューヨーク) - 2022年「JAPAN. BODY_PERFORM_LIVE: Resistance and Resilience in Japanese Contemporary Art」
(Padiglione d’Arte Contemporanea、ミラノ) - 2022年「SHÉHÉRAZADE LA NUIT」(パレ・ド・トーキョー、パリ)
- 2022年「I have not loved (enough or worked)」(西オーストラリア州立美術館、パース、オーストラリア)
- 2022年「第17回イスタンブール・ビエンナーレ」
- 2022年京都国際舞台芸術祭 「メルツバウ、バラージ・パンディ、リシャール・ピナス with 志賀理江子『Bipolar』」(京都芸術劇場 春秋座)
- 2021年「コレクション展2 BLUE」(金沢21世紀美術館)
- 2021年「温情の地:震災から10年の東北」(Composite、メルボルン)
- 2021年「Reborn-Art Festival 2021-22」(牡鹿半島(小積)、宮城)
- 2021年「Off the Wall」(サンフランシスコ近代美術館)
- 2019年個展「志賀理江子 ヒューマン・スプリング」(東京都写真美術館)
- 2018年「ビルディング・ロマンス─現代譚(ばなし)を紡ぐ」(豊田市美術館、愛知)
- 2017年個展「志賀理江子 ブラインドデート」(丸亀市猪熊弥一郎現代美術館、香川)
- 2015年「ニューフォトグラフィー2015」(ニューヨーク近代美術館)
- 2013年個展「カナリア」(Foam写真美術館、アムステルダム)
- 2012年個展「螺旋海岸」(せんだいメディアテーク6階 ギャラリー4200)
- 2010年「六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?―明日に挑む日本のアート―」(森美術館、東京)
- 2010年「あいちトリエンナーレ2010:都市の祝祭」(愛知芸術文化センター)
- 2008年「トレース・エレメンツ─ 日豪の写真メディアに関する精神と記憶」(東京オペラシティアートギャラリー)
- 2006年「Rapt! 20人の日本の現代作家」(セブンズ・ギャラリー、メルボルン)
受賞歴
- 2014年「第24回 タカシマヤ美術賞」(公益信託タカシマヤ文化基金)
- 2009年「ICPインフィニティアワード」新人賞
- 2007年「第33回 木村伊兵衛写真賞」
「安全・清潔・便利な住環境に育った私とカメラ機器の親和性は、その暴力性において極めて高かった」と述べる志賀は、写真の時空が「死」よりも深い救いと興奮を自らに与えたとも言う。2008年から宮城県に移り住み、その地に暮らす人々と出会いながら、人間社会と自然の関わり、死の想像力から生を思考すること、何代にも溯る記憶などを題材に制作を続ける。2011年、東日本大震災での沿岸部における社会機能喪失や、厳格な自然法則という体験は、その後、戦後日本のデジャヴュのような「復興」に圧倒されるという経験に結びつき、人間精神の根源を、様々な制作によって追及しようとした。過去と未来が断ち切られた「永遠の現在」と呼ばれる時空間を、写真のメディア性に置き換え可視化することを意識する作品は、鑑賞者が己の身体と意識を、イメージによる鏡に写し見るような写真空間である。
TCAA2021-2023 選考委員長 コメント
今年の選考は、新型コロナウィルス感染症が長期化する中、移動が大幅に制限されたことで、例年以上に難しいものとなった。選考委員の大半は、実際にアーティストのスタジオに行くことができなかった分、オンライン上でのスタジオ訪問やプレゼンテーションに頼る部分が大きかった。TCAAの素晴らしいチームワークと、アーティストたちの辛抱強さと献身的な努力のおかげで、アーティスト各々の活動について、非常に幅広くそして深く調査することができた。
当初からこの賞に関わってきた選考委員と新たな選考委員とが混在する中、選考前の話し合いや最終選考では、非常に活発で建設的な議論ができた。この賞がこれまでどのような位置付けで、どのように組み立てられてきたのか、また今後どのように進めていくかについて反省点や検討すべき点が見つかったが、選考会では、アーティスト一人ひとりについて丁寧に議論することができ、それぞれの意見を互いに思う存分伝え合うことができたと思う。その結果、じっくりと十分な議論を重ねた上での最終決定となった。
今、グローバル化は難題となり再検討される過酷な時期を迎えている。その中でも、TCAAはアーティストがより大きなアートの世界のさまざまな場面に少しでも多くつながることができるように、最大限の努力を続けている。更なる成長を目指して活動を続けているアーティストたちを支援するこの賞は、近い将来きっと実を結ぶだろう。選考委員として、前向きで未来を見据えたこのような素晴らしい取り組みに参加できたことを、大変光栄に思う。
受賞の理由
制作や現実に対して思慮深く、真摯に向き合う態度と、写真というメディアの性質と人間の精神性との等価性の探求や、写真と身体のあり方を横断する視点といった独自性が評価された。
東日本大震災からの「復興」をとおして近代社会がいかに人々の精神を抑圧してきたかを考えることにより、その制作と思考には、人間の本性、中心と周縁、死と喪、規制と自由、自然との調和、など私たちが生きている社会を考える重要な要素が凝縮されている。
作品をつくることをとおして彼女がこれらと向き合おうとしていることを本アワードが支援することには大きな意義があると考える。